税理士・会計事務所を取り巻く環境は、今後10年間で大きく変化していきます。
この変化に適応しなければ、10年後も事業を存続できる保証はありません。
そもそも、会計事務所でなにが課題となっているのか、きちんと理解できているでしょうか。
現状に問題意識を持ち、適切な対策を講じていかなければ、いつの間にか時代に取り残されかねません。
本記事では、税理士や会計事務所の現状と課題、生き残り戦略のポイントについて解説します。
10年後に生き残るための対策を、今日からはじめましょう。
目次
税理士・会計事務所の現状と課題とは
まずは、会計事務所の現状と課題について解説します。
税理士・会計事務所は人手不足
人口減少が進む日本では、人手不足は全産業に共通する課題といえます。
そのような中でも会計事務所における課題は「即戦力人材の不足」です。
中小規模以下の会計事務所で起こりがちな問題として、「人員に対して業務量が多く、常に人手不足となっている」「社内の研修制度・教育体制が整っていない」などが挙げられます。
大規模の会計事務所になるためには、売上をさらに伸ばしていく必要があるでしょう。
こういった会計事務所では、未経験の人材を雇う余裕はありません。研修や教育が要らない、成果をすぐに出せる即戦力人材を求めています。
しかし、即戦力人材の応募は少なく、獲得競争は厳しいものです。
また未経験人材を雇うこともできないため、結局、いまの人員で売上を伸ばしていくしかありません。
いつまでも人手不足のループから抜け出せなくなってしまいます。
税理士の二人に一人は60歳以上
少子高齢化の波は、会計事務所の経営にも影響を及ぼしています。
税理士の二人に一人は、60歳以上。40歳代以下はおよそ3割しかいません。
熟練の人材が今後10年間で引退を迎えれば、さらなる人手不足が予測されます。
ベテラン層から知識・ノウハウをうまく継承できなければ、次世代を担う人材の育成も追いつかないでしょう。
また、顧客となる企業の経営者は、事業継承や起業などで若い層が増えているため、若い税理士の活躍も今後期待されています。
記帳代行や給与計算などのサービス差別化の限界
会計業務は事務所ごとに大きな違いはなく、どこも似通ったサービスを提供しています。
今後、新規顧客を増やす、顧客単価をアップさせるためには、周りと差別化したサービスの提供が喫緊の課題となります。
「既存顧客で十分な売上を得ているから問題ない」との考えでいると、差別化に成功したライバルに顧客を奪われる可能性があることを理解しておかなければなりません。
- 記帳代行
- 給与計算
- 決算申告書・確定申告書作成
- 税務署提出用書類の作成
など
AIやRPAに仕事を奪われる可能性
英国オックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン教授は、2013年に「雇用の未来(The Future of Employment)」を発表。
論文では、今後10~20年の間に47%の職業がAIに仕事を奪われる、と主張しました。
この中で、レジ店員や金融機関の窓口などの「なくなる仕事」と並んで、税理士や会計士も挙げられています。
実際に、単純な記帳代行は会計ソフトで代替できるようになり、一部のAI先進国では税理士の需要が低下し始めています。
もちろん、今のところ複雑な会計処理や専門性の高い相談は、人間にしか対応できません。
しかし、加速度的に進むAIやRPAのめざましい発展によっては、10年後も確実に仕事があるとは言い切れないでしょう。
時代の変化に対応するためには、これまでとは違う付加価値を顧客に提供していくことが重要です。
税理士・会計事務所が生き残る2つのポイント
生き残るための対策を2つのポイントで解説します。
即戦力を補う充実した教育カリキュラム
優秀な人材の確保は、熾烈を極めます。
福利厚生・給与など待遇面の充実している大手会計事務所を差し置いて、即戦力人材を確保することは容易ではありません。
現実問題として人手不足から脱出するためには「経験の浅い人材を育成する」というアプローチが不可欠です。
しかしながら、「自社内で研修・育成をおこなう体力はない」というのが本音でしょう。
解決策としては、外部の教育カリキュラムを活用し、「放っておいても人材が育つ仕組み」をつくることが効果的です。
たとえば「経営革新等支援機関推進協議会アカデミー(実務体験型プログラム)」は、企業支援に必要となる補助金・公的制度・金融・財務知識をイチから学べる教育機関です。
カリキュラムは「補助金・公的制度コース」・「金融・財務コース」・「事業承継コース」に分かれています。知識の習得から実務の実践まで、短期間で修了可能です。
- 事業再構築補助金
- ものづくり補助金
- 小規模事業者持続化補助金
など
こういった外部の教育カリキュラムを利用すれば、既存の従業員に負担をかけずに人材育成が可能となり、雇用できる人材の幅も広がるでしょう。
税務・会計業務の大幅な効率化
単純な会計業務は、会計ソフトなどITツールの力を積極的に借りましょう。
そこで短縮できた時間で、顧問先の相談に親身に乗ったり、後輩の育成・指導したりと、大切な業務に時間を割くことができます。
導入にあたっては、以下3点を意識することが大切です。
課題解決
そのITツールで本当に事務所の課題を解決できるかを考えてください。
高機能のサービスであっても、課題を解決できなければ意味がありません。まずは、事務所の課題を明らかにすることからはじめましょう。
費用対効果
導入コストに対して、それ以上の投資効果を得られるかもチェックしてください。
また、毎月一定額が発生する「月額課金型」か、一度で買い取る「買い切り型」かによって、費用のやりくりも変わってきます。
サポート体制
導入や運用に際して、さまざまなトラブルが起こるかもしれません。
サポート体制が不十分ならば、業務に支障をきたす恐れもあります。迅速に対応してもらえるサポート体制があるかも確認しましょう。
補助金・優遇税制支援など手広いサービス展開
会計業務だけに頼らず、補助金支援や財務支援や優遇税制支援などの付加価値の高いサービス展開を進めることで、顧問先により手厚い提案ができます。
「経営革新等支援機関推進協議会」では、認定支援機関業務のトータルサポートもおこなっています。
実務経験のない会計事務所であっても、「各種申請書のサンプル提出」「申請書の添削サービス」「個別相談窓口」により対応可能となります。
申請書のサンプルには、各補助金を含め、経営力向上計画や先端設備等導入計画などがあり、申請書の添削では専門スタッフが精度を高めます。
スタッフ教育も重要なミッション
Mikatus(ミカタス)株式会社が2020年11月におこなった「税理士業界における人材・採用・教育に関する実態調査」によると、税理士の6割がスタッフ教育に何かしらの課題を抱えていると回答しました。
具体的な課題で一番多かったことは「スタッフのスキルアップ」でした。多くの税理士がスキルアップの重要性を理解しています。
また、スタッフの学習環境については、「各自の自習に任せている」が約4割にのぼりました。残りのほとんどは、外部のセミナーや研修に参加しています。
このようにスタッフ教育は、会計事務所における重要なミッションです。限られたリソースの中で、効率的にスキルアップを目指していくためには、「経営革新等支援機関推進協議会」の教育カリキュラムを活用して、「スタッフが自走式で成長していく仕組み」を築くことが大切です。
10年後、生き残ってください
会計事務所を取り巻く環境は、年々厳しいものとなっています。
「二人に一人は60歳以上」で「AIに仕事を奪われてしまう可能性」のある業界では、これまでのやり方に固執するのではなく、積極的に経営改革を目指すべきでしょう。
10年後を生き残るために、新しい教育カリキュラムの導入や、会計業務の効率化、補助金・優遇税制・財務支援によるサービス差別化を「経営革新等支援機関推進協議会」を活用して実現してください。
若い税理士がまったく足りないし、いずれはAIに仕事を奪われてしまう…