会計事務所支援ブログ

顧問先に必要な資金調達支援で事務所売上を向上させるには

顧問先の中には、補助金申請書類や金融機関へ提出する融資審査書類の作成が不慣れで、作成に会計事務所の支援が必要な場合があります。

会計事務所にとっても、顧問先の事業拡大の支援や、創業融資を希望する新規開業予定者へのサポートは、前向きに取り組みたいテーマのひとつです。

本記事では、顧問先の融資支援と報酬についての考え方と注意点を解説します。

顧問先への融資支援

顧問先の事業拡大には、補助金や金融機関からの融資などの資金調達が不可欠です。

一方、書類の作成に不慣れ、資金繰り表などの融資審査書類の作り方がわからない、内容に不安があるなどの事業者・経営者は、会計事務所の融資支援を必要としています。

顧問先が必要としている財務・融資支援

すでに事業を経営している顧問先であっても、会計知識が必要な経営計画書の作成や、事業見通しの記載が必要な補助金申請書類は作成にかける時間、従業員への負担、書類の正確性などさまざまな課題を抱えています。

顧問先から会計事務所への期待感

顧問先は融資支援局面での会計事務所に

  • 正確な経理知識がある
  • 計画書の作成に慣れている
  • 計画書の数字などをチェックしてもらえる
  • すでに社内の経理面を把握しており相談しやすい

などの専門性を必要としています。

事務所のメリット・デメリット

会計事務所にとって、顧問先への融資支援のメリット・デメリットは、次のとおりです。

顧問先の属性メリットデメリット
顧問契約がある会社顧問先との関係性が強化できる
顧問料以外の売上になる
事務所スタッフの負担が増える
顧問契約がなかった会社既存の顧問先以外からの売上になる
顧問先の増加につなげやすい
現状把握に時間が必要となる
事務所スタッフの負担が増加する
創業予定者顧問料以外の売上になる
新規の顧問契約につなげやすい
金融機関からの評価を得やすい
事務所スタッフの負担が増える
融資が不成功となるリスクがある

融資支援へ取り組むと、事務所売上や顧問先の開拓につながる一方、有資格者や補助員など事務所スタッフの負担が増します。

限られたスタッフで、融資支援による売上向上や顧問先の開拓をおこなうには、スタッフの教育訓練と同時に、事務所経営の効率化にも取り組むことが必要です。

新規開業予定者への創業融資支援

新規開業予定者の多くが、創業融資で金融機関への提出がほぼ必須である創業計画書の記載が不十分な傾向が見受けられます。

また、第三者からの客観的な意見は、創業予定者にとっても有益な助言です。

事業開始後も、記帳指導・代行や確定申告など会計事務所が活躍する機会は数多くあります。

会計事務所へ融資相談を導くには

融資支援は、経営コンサルタント、その他の士業事務所など多くの専門家が参入していますが、経営者から見た場合、会計事務所にはさまざまな利点が存在します。

会計事務所からの融資支援への期待感
顧問先・関係ができていて、相談しやすい
・有資格者への安心感がある
・金融機関から好意的な評価を得やすい
他の会計事務所の顧問先・財務支援や融資支援などの複合的な支援を求めている
新規開業予定者・有資格者への安心感がある
・数字に詳しい専門家から、助言を得たい
・事業開始後の継続的な助言・指導を受けやすい

融資支援で頼られる会計事務所として、顧問先や見込み先からの融資相談を受けるためには、

  • 顧問先への提案
  • 新規開業予定者からの相談ルートの開拓

などのマーケティング知識が必要です。

融資支援が必要な顧問先(または見込み先)

「経営革新等支援機関推進協議会 2021全国一斉調査アンケート結果」によると、コロナ禍で補助金関連の企業ニーズが増えたことを背景に、半分以上の会計事務所で顧問先数が増えたと考えられます。

足元では、コロナ融資の元金返済開始や原材料価格の高騰への対策など、コロナ禍で増加した顧問先からの財務支援ニーズが高まっています。

すでに関係性ができている顧問先に対しては、

  • 税務相談以外の、経営情報の発信
  • 顧問先の関心が高い補助金申請や、手間がかかる融資審査書類への作成支援実績のPR

などが有効です。

会計事務所の担当件数の考え方とは

創業融資支援が必要な見込み先

新規開業予定者とは接点がないため、創業前に接触する業界へのPRとパイプ作りが必要です。

例えば、次の相手先が想定できます。

創業融資支援が必要な見込み先
  • フランチャイズチェーンの本部
  • 不動産仲介業者
  • 店舗什器、設備などの販売業者、工事業者
  • 商工団体(商工会議所、商工会など)
  • 創業支援をおこなっている支援機関(よろず支援拠点、創業支援センターなど)
  • 民間金融機関
  • 創業支援に取り組んでいる、他の士業事務所(運送業分野であれば行政書士など)
  • 顧問先(知人紹介や社員の独立など)

金融機関が納得しやすい融資支援

金融機関も信頼できる会計事務所が関与した資料は「融資審査で参考にしやすい」、「計画の実現可能性について確度が高い」と考えやすくなります。

金融機関から見た、会計事務所の融資支援への期待感・不安感とその対策は次のとおりです。

期待感不安感不安感への事務所の対策
金融機関の審査担当者にとって・過去の業績を踏まえた見通しである
・正確な数値が期待できる
・客観的な意見が反映されている
・事業開始後に定期的な業績チェックが期待できる
・その事業分野に精通しているかどうか
・今まで融資支援実績があるか
・報酬額が過大ではないか
・融資支援のみで終わらないか
・導入実績が多いシステムやフォーマットを採用している
・過去の支援実績のPR
・相場水準の報酬にする
・顧問契約予定であることを説明する

会計事務所による融資支援は実績が重視されますが、融資審査ではおおむね好意的に捉えられます。

創業融資の多くは、政府系金融機関である日本政策金融公庫(国民生活事業)の創業融資制度が検討されます。

日本政策金融公庫における創業融資の審査通過率(可決率)は非公表ですが、一般的には50~60%と言われており、約半数が否決されることとなります。

創業融資が否決される理由(事業計画書について)
  • 第三者からの客観的な視点・チェックがなく、正確性に不安が残る
  • 経営指標に基づいたチェックがされていない
  • 業績が創業前の見通しを下回った場合が想定されていない
  • 事業開始後の、記帳や経理、資金繰り管理体制に不安感がある

否決理由は、税理士や経営革新等認定支援機関からの助言を踏まえて、計画書を再作成するように助言されます。

税理士が認定支援機関となって売上をアップする方法

顧問先への融資支援の成功報酬

融資による資金調達の成功報酬は、融資実行額に応じて着手金+成功報酬とする料金体系が多く、融資額にかかわらず固定料金とする事例は限られます。

融資の成功報酬の相場

融資による資金調達への支援の報酬料金には、顧問先との交渉や会計事務所の方針はさまざまです。

  • 着手金なし(成功報酬のみ)
  • 着手金+成功報酬(最低金額なし、最低金額あり)
  • 着手金+成功報酬が一定
  • 着手金+成功報酬は低めだが、顧問契約が必要
  • 着手金+成功報酬は低めだが、計画書作成は添削のみ

着手金と成功報酬の料金であれば、資金調達額の2%~5%に設定している会計事務所が多いといえます。

一方、資金調達額にかかわらず一定の料金を請求する場合、事業計画書の添削など部分的な支援のみをおこないます。

成功報酬は出資法の制限に注意

融資支援で顧問先から成功報酬を受け取る際は、出資法第4条に注意しましょう。

出資法(出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号))
(金銭貸借等の媒介手数料の制限)
第四条 金銭の貸借の媒介をおこなう者は、その媒介に係る貸借の金額の百分の五に相当する金額(当該貸借の期間が一年未満であるものについては、当該貸借の金額に、その期間の日数に応じ、年五パーセントの割合を乗じて計算した金額)を超える手数料の契約をし、又はこれを超える手数料を受領してはならない。

【参考】出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律(昭和二十九年法律第百九十五号)|e-Gov法令検索

顧問先が金融機関へ融資を申し込む際の資料作成の支援であれば、出資法第4条の「金銭の貸借の媒介」には該当しないとする解釈もありますが、『金銭の貸借の媒介』と顧問先の『資金調達への支援』では、同様の結果をもたらすため、実務では条文に合わせた報酬額であるとすることが推奨されています。

報酬額( = 着手金 + 成功報酬 )  <  融資額 × 5%

事務所の効率化で融資支援への対応を増やす

顧問先への訪問や確定申告業務、新規顧問先開拓活動に加えて融資支援をおこなうには、スタッフの育成が必要です。

財務支援を融資支援へ繋げる

融資支援は顧問先の財務支援の延長線と捉えましょう。

顧問先への定期訪問時に、経営の悩みや課題を共有してもらい、解決策を提供することで、補助金申請や融資支援を実行しやすくなります。

財務支援などの定期業務は財務支援システムの導入で効率化・定型化でき、スタッフのレベルを標準化することにもつながります。

売上向上と効率化を同時に取組む

限られたスタッフ数売上を向上させるには、提供サービスのバリエーションを増やしつつ、スタッフの育成、マルチタスク化が必要です。

スタッフの育成は少人数の事務所では対応しにくいため、外部サービスを利用することで効率的かつ十分な能力開発と育成の成果が得られます。

他の事務所の成功事例を参考に労働環境や業務体制の改善にも役立ちます。

税理士事務所も人手不足!アウトソーシングによる効率化を解説

顧問先への支援は、経営革新等支援機関推進協議会がサポートしま

経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する、会計事務所向けの支援団体です。

研修会の開催、各種フォーマットによるノウハウと仕組みのご提供を通じて、中小企業経営力強化支援法に基づく経営革新等支援機関に認定された会計事務所様による顧問先支援を、全面的にサポートしております。

経営革新等支援機関推進協議会のサービス

経営革新等支援機関推進協議会では、事務所経営をサポートしており、1,633の会計事務所様(2022年9月現在)にご参加いただいております。

  • 補助金・財務支援をおこなうために必要なサービスを、一気通貫でご提供
  • ご利用料金は、1拠点につき、月額33,000円(税込)の定額
  • 事務所スタッフの一連の教育訓練から、支援時のお悩みへのサポートまで対応

経営革新等支援機関推進協議会の主なサポートメニューは、次のとおりです。

スタッフの知識習得のサポート

  • 定例研修会

会員事務所様限定で、毎月、オンラインで開催しております。最新の公的支援制度への支援やコンサルティング手法、財務金融支援の支援事例の共有などをセレクトしてお届けしております。

  • 制度解説動画

各種の最近の制度解説、支援のポイント、支援事例など359(2022年9月時点)のコンテンツを動画配信しております。

  • 経営革新等支援機関推進協議会アカデミー

補助金制度・公的支援制度・金融や財務知識などを、1から学習できるカリキュラムを用意しております。
コースは4種類、1コース約3ヶ月間で修了するアカデミーに、スタッフ育成を丸ごとお任せください。

実務支援をトータルでサポート
 ・各種申請書サンプルの提供
 ・申請書の添削サービス
 ・補助金申請先などに質問しづらい場合の、個別相談窓口


マーケティング支援
 企業向けにすぐに活用できる販促ツールをご用意しております。顧問先への毎月の情報提供やセミナーを自動化することで、効率的に販促できます。


財務支援システムF+Prus(エフプラス)
顧問先の決算書を活用し、課題の自動抽出~金融機関目線での格付け診断~事業計画書の自動生成~決算レポートの作成まで、一気通貫に提供可能です。


月額料金内のサービスで、追加料金は不要です。

会計ソフト23種類に対応しており、導入も簡単です。

まずは14日間の無料トライアルをお試しください。

まとめ

顧問先への融資支援は、事務所売上の向上や新規顧問先の開拓につながる有益な取り組みです。

顧問先への財務支援と組み合わせることで、顧問先へ提供サービスの拡充と単価アップにつながるため、積極的に取り組みましょう。

融資支援を含めた付加価値の高い顧問先支援をおこなうためには、スタッフの育成や定型業務の効率化が不可欠です。

ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。

ABOUT US

経営革新等支援機関推進協議会
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する会計事務所向けの支援団体です。2014年4月に設立し現在では、全国1700以上の会計事務所が正会員として参画しており、中小企業支援制度についての勉強会・システム提供を通じて全面的にバックアップしている。