税理士は経営者の日常的な相談相手であり、顧問先へ認定支援機関としての業務を提案しやすいです。
認定支援機関としての業務の拡充は事務所の売上増加やほかの事務所の差別化につながります。
本記事では、認定支援機関業務を拡充することで税理士事務所の売上をアップする方法を紹介します。
認定支援機関とは?認定支援機関となるには?
認定支援機関(正式名称は認定経営革新等支援支援機関)とは、中小企業支援の専門家として国に登録されている支援機関のことです。支援機関としては税理士、中小企業診断士や金融機関などがあります。
認定支援機関となるためには一定の専門知識や実務経験が必要です。
認定支援機関とは
認定支援機関は中小企業支援に関する専門的な知識や実務経験がある税理士、金融機関などが、国から認定を受ける必要があります。
認定支援機関としての登録を受けることで、中小企業支援の専門家であることを公的に認められることとなり、顧問先に対して事務所の専門性をアピールしやすくなります。
認定支援機関ができること
認定支援機関は中小企業支援の専門家としてさまざまな業務をおこなうことができます。
なかでも認定支援機関の関与が必須とされている公的支援策は主に次のとおりです
- 事業再構築補助金の事業計画の確認
- 事業承継・引継ぎ補助金における事業計画の確認
- 中小企業経営強化税制C類型の申請における事前確認書の発行
- 法人版事業承継税制における特例承継計画への所見の記載
- 個人版事業承継税制における個人事業承継計画の作成への指導および助言
- (早期)経営改善計画策定支援事業による経営改善計画の策定およびモニタリング
【参考】国の補助事業などにおいて必要とされる認定支援機関の役割について|経済産業省
認定支援機関となるには
認定支援機関となるための3つの要件は次のとおりです。
- 専門知識要件
以下のいずれかを満たすこと。
- 税務、金融及び企業の財務に関する国家資格や業の免許・認可
- 主たる支援者としての経営革新計画などの策定支援および計画認定件数3件以上
- 中小企業基盤整備機構の所定の研修の受講および試験の合格など
- 実務従事要件
中小企業・小規模事業者支援における実務経験3年以上と法定業務における実務経験1年以上などがあること。
- 事業基盤要件
申請前3期間の事業所得が黒字または収支予測を添付すること。
上記の要件に加えて、欠格条項(禁固刑以上の刑の執行後5年以内など)のいずれにも該当しないことが必要です。
【参考】具体的な認定基準について|中小企業庁
【参考】経営革新等支援機関の認定(更新)基準について|関東経済産業局
税理士法人が認定経営革新等支援機関となるためには、定款に「税理士業務に付随して行う会計業務(税理士法第2条第2項)」及び「税理士業務に付随しない会計業務(規則21条)」の記載が必要となる場合があります。
新規の認定申請については、所定の締切日ごとに偶数月の下旬に認定されます。
認定支援機関の更新要件と手続き
2023年3月24日から、すべての認定経営革新等支援機関が5年ごとに更新することとなりました。更新の認定を受けない場合は認定が失効します。
更新申請時においても新規認定の申請と同様に、計画認定件数3件以上などが条件となっています。
現在の認定有効期限日の1か月前までとなる申請締切日までに更新の申請が必要です。
認定支援機関は税理士が7割。税理士が認定支援機関となるメリット
税理士事務所の多くが認定支援機関として登録しています。
認定支援機関としての業務は税理士事務所の業務と親和性が高いことに加えて、事務所にとってもメリットが多くあるためです。
認定支援機関は39,653件、うち税理士が27,708件
経済産業省が公開している『認定経営革新等支援機関検索システム』によると、認定支援機関登録者数は39,653件(2023年10月30日時点)です。うち税理士・税理士法人が70.0%、27,708件(本店26,124、支店1,584の合計)となっています。
税理士事務所数は27,958か所(2021年経済センサス)であるため、多くの税理士事務所が認定支援機関となっていると推測されます。
【引用】認定経営革新等支援機関検索システム|中小企業庁
【引用】2021年経済センサス活動調査 サービス関連産業に関する集計|e-Stat
認定支援機関の利用実績は税理士・税理士法人がトップ
中小企業が利用した認定支援機関は、税理士・税理士法人が31.9%でトップです。
次いで金融機関20.8%、商工会議所・商工会20.9%となっています。
【引用】2021年認定経営革新等支援機関に関するアンケート|経済産業省より作成
認定支援機関の知名度は15%。建設・卸小売・サービス業で知名度低い
認定支援機関についての知名度は15.5%と低く、特に知名度が低い業界は建設業、卸・小売業、そのほかのサービス業です。
認定支援機関からのサポートを知らない、どのような支援があるかわからない顧問先がいる可能性があります。
【引用】2021年認定経営革新等支援機関に関するアンケート|経済産業省より作成
認定支援機関業務の受注で売上をアップ
税理士が認定支援機関となるメリットをまとめると次のとおりです。
- 中小企業支援の専門家としてアピールしやすくなる
- 認定支援機関の関与が必須となっている公的支援策の提案が円滑となる
- 支援業務の受注による売上増加、顧問先あたりの単価の上昇が期待できる
- 経済産業省のホームページ『認定経営革新等支援機関検索システム』において、事務所名や業務実績数を公開することで、事務所のアピールできる
- 認定支援機関としての実績を積みあげることで金融機関などからの紹介を受けやすくなる
- 税務・会計業務以外に強い事務所として、ほかの事務所との差別化につながる
税理士が認定支援機関となって売上を増やすための7つのポイント
多くの税理士事務所が登録している認定支援機関となるのみでは、受注を獲得できる可能性は高くはありません。
自事務所の売上をアップさせるためには、事務所が支援業務に力をいれていることを顧問先に伝え、受注する必要があります。
補助金に関する情報提供がはじめやすい
補助金に関する情報は経営者の関心度が高いため、情報発信の素材として使いやすいテーマです。
認定支援機関に関するアンケートによると、経営者が使ってみたいと考える支援内容は主に次のとおりです。
- 補助金、税制活用およびこれらに付帯する計画書作成への支援 39.4%
- 売上拡大 26.0%
- IT利活用(内部管理・効率化) 19.0%
- 資金繰り 14.5%
【引用】2021年認定経営革新等支援機関に関するアンケート|経済産業省より作成
顧問先のニーズは補助金と補助金以外のアドバイス
認定支援機関を利用した経営者へのアンケートによると、利用したときの満足度が高い理由は次のとおりです。
- 支援等が適切だった 70.6%
- 補助金など以外に関するアドバイスなどがあった 39.5%
顧問先における満足度を高めるためには、補助金など顧問先の利用ニーズに対する支援だけでなく、優遇税制や販路開拓など、別のアドバイスを加えた支援が求められています。
【引用】2021年認定経営革新等支援機関に関するアンケート|経済産業省より作成
補助金とともに提案を検討したい、優遇税制・事業計画策定・資金繰り改善
税理士事務所がおこなう税務・会計業務と親和性が高い支援業務として、事業計画の策定、優遇税制などの公的支援策の活用支援などがあげられます。
一方で、実際に認定支援機関としておこなった業務の内容をみると、顧問先のニーズが強い公的支援策の活用支援に取り組んでいる認定支援機関は12.1%と少ないことがわかります。
【引用】2022年度認定経営革新等支援機関に関する任意調査報告書|中小企業庁
販促ツールはアウトソーシングがおすすめ
顧問先の関心が強い補助金などの公的支援策はひんぱんに改正されます。改正の都度、詳細について把握した情報提供素材を作成すると大変な労力が必要です。
税理士事務所向けに、公的支援策の紹介などの情報提供素材を提供するサービスが提供されているため、活用を検討します。
実績を顧問先、金融機関へアピール
顧問先が認定支援機関を選ぶときに特に重視している点は次の2つです。
- 自社への支援実績 40.8%
- 支援業務以外に取引がある 30.5%
顧問先へ支援業務の受注を提案するときのポイントをまとめると次のとおりです。
- 支援業務の実績がある顧問先
・過去のデータなどを活用して効率的に支援できる
- 支援業務の実績がない顧問先
・自事務所でほかの顧問先への支援実績がある
・月次監査などで顧問先の事業内容について把握しており、顧問先にあった支援が可能
・顧問先が利用を想定している支援策について、ほかの顧問先での支援実績があること
【引用】2021年認定経営革新等支援機関に関するアンケート|経済産業省
営業トークは具体的に説明
顧問先に対する業務の提案は、顧問先自身が容易にイメージできる下記の内容が説明のポイントです。
- 切り口は顧問先が関心を寄せるテーマ
- 顧問先の考えている投資内容や事業の計画に基づいていた説明
- 事務所における実績や事務所ができるサービスの内容
提案説明の例として次の内容があげられます。
「今回は新しい補助金制度である『省力化投資補助金』の案内を送付しています。
社長様よりお聞きしている、ドローンを活用した土地測量サービスについて、この補助金の対象となる可能性があります。
以前、IT補助金の申請をお手伝いさせていただいたこともありますので、申請を検討してみましょう。」
認定支援機関業務を推進するためには事務所の効率化が必要
事務所の本業である税務・会計業務に加えて認定支援機関としての業務をおこなうためには、事務所のマンパワーが必要です。
会計業界全体で人手不足が続く中、限られた人的資源でサービスを拡充するためには事務所の効率化が欠かせません。
また事務所スタッフが支援業務をおこなえるように、教育・指導体制を整え、研修時間を確保することも必要となります。
事務所の業務内容を見直しし、ほかの事務所との差別化が難しい記帳代行など定型業務のアウトソーシング、税理士事務所スタッフ向けの研修サービスの活用などを検討しましょう。
まとめ
税理士事務所は認定支援機関として求められる業務をおこないやすい事業です。
顧問先が求める支援業務を拡充することで、顧問報酬以外に支援業務報酬を得るなど、事務所の付加価値の向上を図ることが可能です。
また税務・会計以外の業務を拡充することで、ほかの事務所と差別化することにつながります。
支援業務の拡充のための時間は、事務所の効率化によって確保することを検討します。
経営革新等支援機関推進協議会は会計事務所における認定支援機関業務の実績づくりをサポートしています。
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