税理士の独占業務は「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つです。税理士独占業務のみでは差別化が難しいため、独占業務以外で顧問先を確保し売上をあげる必要があります。
本記事では、税理士の3つの独占業務と独占業務以外で売上をあげる方法について解説します。
目次
税理士の独占業務「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」とは
税理士法により税理士だけがおこなうことができる独占業務として「税務の代理」「税務書類の作成」「税務相談」の3つが税理士法により定められています。
税務の代理
税務の代理とは納税者本人に代わり税金の申告や納付、調査および処分に対する主張や陳述をおこなうことです。
税務書類の作成
税務書類の作成とは、確定申告書など、税務署に税金を申告する際に作成する書類を、納税者本人に代わって作成することを指し、単なる代書は含まれません。
税務相談
税務相談とは、税金の申告や税務署からの調査・処分における主張や陳述について納税者からの相談に対応することです。例えば納税額の計算、納税手続き、節税方法についての計算、税務署への主張などが該当します。
非税理士がおこなう税理士独占業務は無償でも税理士法違反
税理士資格をもっていない非税理士が、税理士の独占業務をおこなうと、税理士法違反となり、違反時の罰則として、2年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられることがあります。
税理士の独占業務は無償独占
税理士資格を有さない者が税理士独占業務をおこなう場合、有償無償を問わず法律違反となります。例えば非税理士が無償で税務相談に対応した場合は違法です。
税理士の独占業務の例外
税理士の独占業務の例外として、行政書士との共同独占業務があり、租税の範囲外とされている租税があります。
次の租税に関する税務書類の作成は、税理士だけでなく行政書士もおこなうことができるとされています。
- ゴルフ場利用税
- 自動車税
- 軽自動車税
- 事業所税
- 石油ガス税
- 不動産取得税
- 特別土地保有税
- 入湯税
- 都道府県および市町村(特別区を含む)たばこ税
また税理士業務における租税の対象外となる税金として、主に以下の税があげられます。
- 印紙税
- 登録免許税
- 自動車重量税
- 関税など
税理士と社会保険労務士の独占業務の違い
税理士業務と密接に関係する分野に、社会保険労務士がおこなう業務があります。
税理士は社会保険労務士の独占業務をおこなうことはできず、社会保険労務士も税理士の独占業務をおこなうことはできません。
税理士と社会保険労務士の業務が重なる範囲は給与計算です。
労働保険の申告や社会保険手続きは、社会保険労務士の業務、年末調整などは税理士の業務となり、簡単にわけると次のとおりです。
給与計算における棲み分け | 税理士 | 社会保険労務士 |
---|---|---|
労働保険の申告 | × | 独占業務 |
社会保険の手続き | × | 独占業務 |
給与計算代行 | おこなえる | おこなえる |
年末調整 | 独占業務 | × |
税理士は将来性が不安?税理士がおこなう独占業務以外の主な業務
税理士は独占業務をもち、安定した職業といえます。しかし、税理士の主な業務は、独占業務のほか、会計業務に絡んだ業務も多いですが、会計分野は会計ソフトの浸透やAIの発達によって需要が縮小すると予測されています。
このため「税理士は将来に不安」などといわれることがありますが、税理士は独占業務と会計業務をもとに、顧問先をサポートするさまざまなサービスを展開することで、事務所を成長させることが可能です。
記帳代行
税理士の独占業務以外の業務の代表例が記帳代行です。記帳代行とは顧問先の仕訳帳や総勘定元帳などへの記帳作業を税理士事務所がおこなうことです。
記帳代行は税理士の独占業務ではないものの、顧問先における経理事務の合理化などを図るため、記帳から一括して税理士事務所が業務として受託していることが多くみられます。
経営・資金調達相談
税理士は経営に関するお金のプロとして、経営者からの日常的な相談相手となっています。また決算書などにより顧問先の経営状況を把握しているため、事業経営や資金繰りについてアドバイスをおこなっています。
保険代理業務
事業のリスクヘッジなどのために保険契約を提案することもあるため、保険代理店としての業務をおこなう税理士事務所もあります。
起業・創業支援
個人事業主としての起業・創業や、個人事業主から法人成りする際のアドバイス業務などです。創業しようとする人は経営ノウハウや税に関する知識が少ないことがあるため、税理士が経営に関するさまざまな助言をおこないます。
事業承継・M&A支援
高齢化した経営者から次の世代への経営者交代やM&Aは、高度な税務知識が必要とされることがあるため、事業承継税制やM&A仲介などで税理士が活躍しています。
中小企業庁が発表している資料によると、M&A件数6,678件のうち208件(3.1%)の支援機関が税理士です。税理士事務所が仲介するM&A仲介手数料の最低値は100万円から300万円が多くなっています。
【関連記事】事業継承で税理士変更!?経営者交代による顧問契約解消を防ぐ方法
国際税務
海外との取引における税務処理は複雑であり、税理士が頼りとされることが多く、外国人従業員が在籍している顧問先においては、国際税務が問題(課題)となることもあります。
認定経営革新等支援機関としての業務
認定経営革新等支援機関とは、中小企業支援の専門家として国に登録されている支援機関であり、多くの税理士・税理士法人が認定支援機関業務に取り組んでいます。
経済産業省が公開している『認定経営革新等支援機関検索システム』によると登録機関数38,563件のうち税理士・税理士法人が26,623件(本店と支店の合計)です。(2024年6月末時点)
認定支援機関として主な業務は次のとおりです。
- 事業再構築補助金における事業計画の確認
- 事業承継・引継ぎ補助金に関する事業計画の確認
- 事業承継税制における特例承継計画の作成指導、所見記載など
独占業務以外のサービスで税理士事務所の売上を増やすためには
税理士事務所のコア業務は、独占業務である税務相談・税務書類の作成などです。税理士数は8万人を超えるなど、同業事務所との競争が厳しいため、税務以外の分野で売上を増やす取り組みが重要となっています。
独占業務以外のサービスで事務所の売上を増やすポイントは次のとおりです。
独占業務(コア業務)×付随サービス
税理士事務所の強みのひとつは、顧問先の事業内容・業績などを把握していることです。また監査など、経営者と接する機会が多いため、税務・会計をもとに財務改善提案や事業計画策定支援など幅広いサービスの提案が可能となります。
まずは情報発信から!経営者が相談する事務所は同一県内が80%
税務・会計業務以外のサービスを提供するためには、自事務所のサービスを顧問先などに知ってもらう必要があります。
事務所から情報発信する方法としては、ホームページやSNS、DM、セミナー開催の案内など、複数の方法を組み合わせることが一般的です。これから情報発信に力を入れたいとお考えの事務所様は、顧問先や近隣の事業者へのアピールから始めてみてはいかがでしょうか。
中小企業庁の資料によると、税理士など士業がおこなう認定支援機関業務の顧客の所在地は同一・近隣市区町村があわせて52.1%、同一県内で80.0%を占めています。
顧問先へのサービスメニューを整える
顧問先へサービスを提案するときはサービスメニューを整えておきましょう。
メニューを整備することにより次のメリットがあります。
- 事務所が提供しているサービスをわかりやすく説明できる
- 月額顧問料の範囲となる業務、別料金となるサービスが明らかとなる
- 顧問先が負担する報酬額が明確となる
事務所の人手不足をカバーする効率化
税務・会計などのコア業務に加えて顧客支援業務を提供するためには効率化が必要です。会計事務所における効率化の主な例は次のとおりです。
- 顧問先におけるクラウド会計の導入
- 顧問先からの証憑改修を電子媒体に一本化
- 事務所内の業務を細分化し、役割ごとの担当を配置
- 事務所の各担当者がおこなう業務をタスク管理アプリで共有
【関連記事】会計事務所の人手不足の根本的な原因と3つの解決方法
人財強化はアウトソーシングが効果的
顧問先支援業務の代表例として補助金・助成金などの申請サポートがありますが、「専門的に詳しいスタッフがいない」「事務所内で研修する時間が確保できない」などの課題もあるでしょう。
事務所内研修は、会計事務所向けに提供されている「動画研修プログラム」の導入が効率的です。
【関連記事】税理士事務所も人手不足!アウトソーシングによる効率化を解説
マーケティングからスタッフ育成まで協議会がサポートします
税理士には「税務書類の作成」「税務代理」「税務相談」の3つの独占業務があります。独占業務により税理士は安定性が高いものの、同業事務所との差別化が難しいため、独占業務のみでは事務所が衰退するリスクがあります。
税理士事務所を差別化し成長させるためには、税務・会計以外の付加価値サービスを拡充しましょう。
事務所の人財採用からスタッフのスキルアップ、補助金申請サポート時のポイントアドバイスなど会計事務所の収益化と差別化のお悩みは、全国1,721事務所が利用する「経営革新等支援機関推進協議会」がトータルでサポートします。