【2026年8月時点の情報です】
米国の関税措置は、2025年から2026年にかけて何度も枠組みが変わりました。「相互関税は違憲と判断されたと聞いたが、結局いま関税はかかっているのか」「うちの顧問先は直接輸出していないが関係あるのか」——こうした質問を受ける機会が増えているのではないでしょうか。
結論から整理すると、2026年8月時点で日本からの輸出品には原則12.5%の関税が課されています。ただし、その根拠となる法律は当初の相互関税とは別のものに置き換わっており、自動車や鉄鋼は別枠で扱われています。
この記事では、2026年8月時点の状況を時系列で整理したうえで、直接輸出していない中小企業にも及ぶ影響と、税理士が顧問先と確認すべきポイントを解説します。
【2026年8月時点】日本製品への米国関税は原則12.5%
2026年7月24日、米国は1974年通商法第301条に基づき、日本を含む60か国・地域からの輸入品に対して10〜12.5%の関税を課す措置を発動しました。日本からの輸入品に適用される水準は12.5%です。
ただし、この12.5%は「すべての品目に一律で12.5%が上乗せされる」という意味ではありません。
「合計調整方式」とは
今回の措置は、もともとの最恵国待遇(MFN)税率と301条関税の合計が原則12.5%になるよう調整する仕組みです。
| 品目のMFN税率 | 301条による追加分 | 合計 |
|---|---|---|
| 0% | 12.5% | 12.5% |
| 5% | 7.5% | 12.5% |
| 12.5%以上 | 追加なし | MFN税率のまま |
つまり、もともと高い関税がかかっていた品目には上乗せがなく、無税だった品目ほど影響が大きくなります。顧問先の取扱品目のMFN税率を確認しないと、影響の大きさは判断できません。
自動車・鉄鋼・アルミは別枠
自動車および自動車部品、鉄鋼・アルミニウムなどは、通商拡大法第232条に基づく関税の対象であり、今回の国別関税の対象外とされています。232条の関税は引き続き適用されており、税率は品目により異なります。該当する顧問先については、ジェトロや経済産業省の最新情報で個別に確認してください。
また、石油・ガス、食品、肥料など一部の品目は今回の措置から除外されていますが、対象は米国の輸入額の99.4%に及ぶとされており、実質的にはほぼ全ての物品が影響を受けます。
ここまでの経緯を時系列で整理する
2025年から2026年にかけての動きは複雑です。以下の表で全体像をつかんでください。
| 時期 | 出来事 | 内容 |
|---|---|---|
| 2025年 | IEEPAに基づく相互関税 | 国際緊急経済権限法(IEEPA)を根拠に、国・地域ごとに異なる税率の関税を導入 |
| 2026年2月20日 | 米連邦最高裁が違法と判断 | IEEPAは大統領による関税賦課を認めていないと結論 |
| 2026年2月20日 | IEEPA関税の終了と代替措置 | 同日、IEEPA関税を終了する大統領令を発出。あわせて通商法122条に基づき原則全世界一律10%の一時的な輸入課徴金を布告 |
| 2026年2月24日 | 122条関税が発動 | 最長150日という法律上の制限があり、2026年7月24日で期限を迎える設計 |
| 2026年4月 | 相互関税の還付申請受付が開始 | 違法と判断されたIEEPA関税について、納付済み分の還付手続きが始まる |
| 2026年7月24日 | 通商法301条による国別関税へ移行 | 122条の期限切れに合わせて発動。日本は12.5% |
なぜ根拠となる法律が変わったのか
最高裁が問題としたのは「関税という政策手段」そのものではなく、「IEEPAを関税の根拠として用いること」でした。判決は、議会が憲法上有する課税権限を大統領に委譲する場合には、常に明示的な文言と厳格な制限が伴ってきたと指摘し、IEEPAにはそうした委譲は含まれていないと判断しています。
そのため、判決後は根拠法を差し替える形で関税措置が継続されました。122条は国際収支問題への対応を目的とした規定で、最大15%・最長150日という制限があります。この150日の期限が切れるタイミングで、より恒久的に運用できる301条へ移行したという流れです。
2025年時点の相互関税と緊急対応パッケージについては「相互関税の影響と緊急対応パッケージのポイントをわかりやすく解説」で解説しています。本記事は2026年時点の最新状況に絞って整理しています。
相互関税の還付はどうなるか
違法と判断されたIEEPA関税について、2026年4月から納付済み分の還付申請の受付が始まっています。
日本の中小企業が直接の申請主体になるケースは限られますが、米国側の輸入者(現地法人や取引先)が還付を受けられる場合があります。DDP条件などで日本側が関税を実質負担していた取引では、還付の扱いを取引先と確認しておく必要があります。
- 2025年中に米国向けに輸出していた顧問先がいるか確認する
- 関税をどちらが負担する契約になっていたか(インコタームズ)を確認する
- 日本側が負担していた場合、還付分の精算について取引先と協議する余地があるかを整理する
- 還付手続きの詳細や税率の適用関係は不透明な部分が残るため、専門機関への確認を前提とする
直接輸出していない中小企業にも影響が及ぶ
顧問先が「うちは輸出していないから関係ない」と考えているケースは少なくありません。しかし、次のような経路で影響が及びます。
| 経路 | 具体例 | 確認すべきこと |
|---|---|---|
| 取引先経由の間接影響 | 納入先の完成品メーカーが米国向け輸出を減らし、部品の発注が減少 | 主要取引先の売上構成に米国向けが含まれるか |
| 仕入価格への転嫁 | 米国産原材料や、関税の影響を受けた中間財の価格上昇 | 仕入先からの値上げ通知の有無 |
| 為替変動 | 通商政策の変化に伴う為替の振れ | 輸入仕入がある場合の為替感応度 |
| 在庫・運転資金 | 納期・通関の不確実性に備えた在庫積み増し | 在庫回転期間の変化と必要運転資金 |
特に注意したいのが最後の運転資金です。関税や通関の不確実性に備えて在庫を厚く持つと、その分だけ運転資金が必要になります。売上が変わっていなくても資金繰りだけが悪化するというパターンは、決算書を見ているだけでは気づきにくく、税理士が月次で指摘すべき論点です。資金繰りの打ち手は「2026年の中小企業向け資金繰り支援|税理士から提案したい5つの打ち手」で解説しています。また、借入で資金を手当てする場合は「中小企業の金利上昇対策」で触れているとおり、調達コストの上昇もあわせて見込んでおく必要があります。
税理士が顧問先と確認すべき5つのこと
- 売上に占める米国向け(直接・間接を含む)の比率を把握する。取引先の先まで遡って確認する
- 主要品目のMFN税率を確認し、12.5%への調整でどれだけ上乗せされるかを試算する
- 関税負担の契約上の帰属(インコタームズ)を確認する。DDPかFOBかで自社の負担は大きく変わる
- 在庫水準の変化と、それに伴う必要運転資金の増加額を月次で追う
- 資金繰りに影響が出る場合、公的支援策の活用を早めに検討する。経済産業省が米国関税対策のワンストップポータルを開設しており、相談窓口や資金繰り支援策が集約されている
はじめの4つは、通常の月次監査の延長で確認できる内容です。特別な知識がなくても、視点を持っているかどうかだけで顧問先への価値が変わります。資金繰り表の作成と提案には財務支援システム「F+prus」も活用できます。
よくある質問(FAQ)
まとめ
2026年の米国関税は、根拠となる法律がIEEPAから通商法122条、さらに301条へと移り変わりました。2026年8月時点で日本製品には原則12.5%が適用されていますが、MFN税率との合計調整方式であること、自動車・鉄鋼などは別枠であることを押さえておく必要があります。
顧問先にとって重要なのは、関税率そのものよりも「自社の売上と資金繰りにどう影響するか」です。直接輸出していない企業でも、取引先経由の受注減や在庫増による運転資金の圧迫という形で影響は及びます。月次で在庫と資金繰りを見ている税理士だからこそ、早い段階で兆候をつかみ、資金調達や公的支援の活用を提案できます。
経営革新等支援機関推進協議会では、財務支援システムをはじめ、顧問先の資金繰り改善提案を体系的に行うための仕組みを提供しています。全国約1,700事務所が参加する協議会の取り組みは「無料会員サービス」からご確認いただけます。実務の最新情報は「セミナー案内」もあわせてご覧ください。
















「関税がなくなった」という理解は誤りです。根拠となる法律が変わっただけで、関税負担そのものは継続しています。ただし根拠法が変わったことで、税率・対象品目・除外規定はすべて設計し直されています。過去の情報のまま判断すると実務を誤るため、必ず現在の枠組みで確認してください。