認定支援機関とは公的な認定を受けた中小企業支援の専門家です。
2022年10月から公募が開始された事業再構築補助金の第8回公募においても、申請時の事業計画作成への認定支援機関の支援が必須とされています。
本記事では、顧問先からの期待が高まっている認定支援機関になる方法と、事務所の付加価値向上への活用法をわかりやすく説明します。
目次
認定支援機関とは
認定支援機関(正式名称:認定経営革新等支援機関)は2012年8月30日に中小企業経営力強化支援法(現在の中小企業等経営強化法)が施行され、経営革新等支援機関を経済産業大臣が認定する制度として創設したことにより始まりました。
認定支援機関は中小企業支援の専門的知識や実務経験が一定以上あり、経済産業大臣の認定を受けた、中小企業支援の専門家と位置付けられています。
認定支援機関にできること
認定支援機関としての認定を受けると、以下の業務をおこなうことができます。
詳細については、国の補助事業等において必要とされる認定支援機関(経営革新等支援機関)の役割について|中小企業庁にまとめられています。
補助金申請支援
認定支援機関は、顧問先の中小事業者がおこなう補助金申請への支援ができます。
中でも認定支援機関の支援が必須となる補助金制度としては、
- 延べ52,000件を超える案件が採択されている「事業再構築補助金」
- 後継者への承継や後継者不在の中小事業を支援する「事業承継・引継ぎ補助金」
などがあります。
経営計画策定支援
顧問先の経営計画の策定についても、認定支援機関であるからこそできることがあります。
経営改善計画策定支援事業と、早期経営改善計画策定支援事業の2つです。
2つの計画策定支援事業は計画策定費用や伴走支援費用を助成する補助金が設けられているため、これまで計画策定費用を気にしていた顧問先の負担を軽減できます。
名称がよく似た計画策定支援ですが、違いは次のとおりです。
- 経営改善計画策定支援
借入金返済負担などの財務上の問題点を抱えている事業者が経営改善計画を策定する費用が対象です。主に借入のリスケジュール(返済条件の軽減変更)が必要な事業者の利用を想定しています。
- 早期経営改善計画策定支援(旧405事業)
自社の経営状況の把握や資金繰りの管理など、基本的な経営改善に取組む事業者が策定する経営改善計画の費用が対象です。
<計画策定支援への補助金>
通常枠 | 補助対象 | 補助率 | 補助上限額 |
---|---|---|---|
経営改善計画策定支援事業 | 経営改善計画策定費用・伴走費用など | 2/3 | 合計310万円 |
早期経営改善計画策定支援事業 | 早期経営改善計画策定費用・伴走費用 | 2/3 | 合計25万円 |
資金調達支援
顧問先が借入をおこなう際の融資支援についても、認定支援機関が求められています。
顧問先が信用保証協会や日本政策金融公庫の融資制度を利用する際、一部の制度は認定支援機関とともに経営計画を策定することを条件としています。
- 信用保証協会 経営力強化保証制度における信用保証料減免
- 日本政策金融公庫 中小企業経営力強化資金の対象の一部
税制優遇制度支援
顧問先の税制優遇制度の利用においても、認定支援機関の支援が必要とされています。
対象となる制度は以下のとおりです。
- 先端設備等導入計画(中小企業等経営強化法)
認定計画対象の設備について、3年間の固定資産税軽減
- (法人版・個人版)事業承継税制
相続税・贈与税の納税猶予または免除
- 中小企業経営強化税制C類型
認定計画対象の設備について、即時償却または取得価額の10%税額控除です。
顧問先は認定支援機関からの支援を求めています
顧問先の経営者はさまざまな補助金申請や融資への支援のパートナーとして、普段から経営相談をしやすい税務・会計事務所への相談を好みます。
その一方で、経営者が普段から接触している事務所が「補助金申請支援に積極的かわからない」「支援実績がどのくらいあるのかわからない」という不安も抱えています。
また、顧問先の関心度が高い事業再構築補助金や、製造業の生産性向上投資で頼りになるものづくり補助金は認定支援機関との協働が必要であり、作成には専門的な知識が欠かせないため、専門家による支援の需要が高まっています。
【事業再構築補助金の認定支援機関別の応募状況(第6回)】
事業再構築補助金の支給は後払いであるため、事業実施時に必要なつなぎ資金などを融資する金融機関の関与割合は高くなります。
金融機関以外では税理士など(税理士・税理士法人・公認会計士の合計)が3,391件のトップであり、事業者が顧問先を頼りにしていることがわかります。
事務所が認定支援機関となることで、顧問先は公的な認定を受けた認定支援機関であると確認できる安心感、業務実績が一般に公開されていることへの信頼感を持つことができます。
顧問先は普段から相談しやすい税務・会計事務所からの認定支援機関としての支援を求めています。
認定支援機関となるメリット
認定支援機関には、さまざまなメリットがあります。
顧問先からの信頼度が上がる
経済産業大臣の認定を受けることで、顧問先からの信頼感が向上します。
また、更新制度も設けられているため、認定支援機関としての業務を実際におこなっていることが明確です。
認定支援機関として公開される
中小企業庁のホームページに掲載される「認定経営革新等支援機関一覧」で公開されるため、見込み先が支援機関である税務会計事務所を調べることができます。
中小企業支援の専門家としての知識・業務実績が証明できる
中小企業庁ホームページ上の認定経営革新等支援機関検索システムにおいて、支援実績件数が公開されるため、「事務所にどのくらいの支援実績があるか」を顧問先や見込み先へ説明できます。
また、特定の補助金や計画策定支援などの実績が明確であるため、事務所の得意分野を㏚できます。
補助金申請支援など、事務所業務を拡充できる
認定支援機関だからこそ、税務・会計業務以外に事務所が提供できるサービスを拡充できます。
※2022年9月8日に公表された「中小企業活性化支援パッケージNEXT」では、認定支援機関による伴走支援の強化が盛り込まれています。
伴走支援業務は期間が長い契約になるため、積極的に取り組みましょう。
顧問先の単価を引き上げ
顧問先からの顧問料に加えて、補助金申請支援や融資支援の報酬を得ることができ、顧客単価の向上に繋がります。
金融機関からの信頼度が上がる
認定支援機関は中小企業支援に関する一定の知識・業務実績があることの証明となるため、金融機関からの信頼を得やすくなります。
認定支援機関となるには
認定経営革新等支援機関となるには、所定の要件を満たし、申請をおこなう必要があります。
認定支援機関となるための要件
認定支援機関となるための要件は、専門知識要件と実務経験要件があります。
詳細は、以下の基準として公開されています。
(以下、中小企業庁ホームページからの引用)
中小企業・小規模事業者の財務内容等の経営状況の分析や事業計画の策定支援・実行支援を適切に実施する観点から、具体的には、以下のような認定基準としています。
(1)税務、金融および企業の財務に関する専門的な知識を有していること
経営革新等認定支援機関候補として想定される者は、多岐多様にわたり、かつ、それぞれにおいて専門的な知識のメルクマールが異なることから、以下(イ)~(ハ)の3分類で判断することとします。
(イ)士業法や金融機関の個別業法において、税務、金融および企業の財務に関する専門的知識が求められる国家資格や業の免許・認可を有すること (税理士法人、税理士、弁護士法人、弁護士、監査法人、公認会計士、中小企業診断士、金融機関のみ本号に該当)
(ロ)「中小企業等経営強化法」等に基づいて、中小企業者等が「経営革新計画」、「異分野連携新事業分野開拓計画」等(※1)の策定をおこなう際、主たる支援者(※2)として関与した後、当該計画の認定を3件以上受けていること。
(ハ)(イ)や(ロ)と同等以上の能力(※3)を有していること
(2)中小企業・小規模事業者に対する支援に関し、法定業務にかかる1年以上の実務経験を含む3年以上の実務経験を有していること、または同等以上の能力(※3)を有していること
(3)法人である場合にあっては、その行おうとする法定業務を長期間にわたり継続的に実施するために必要な組織体制(管理組織、人的配置等)および事業基盤(財務状況の健全性、窓口となる拠点、適切な運営の確保等)を有していること。個人である場合にあっては、その行おうとする法定業務を長期間にわたり継続的に実施するために必要な事業基盤(財務状況の健全性、窓口となる拠点、適切な運営の確保等)を有していること。
(4)法第32条各号に規定される欠格条項のいずれにも該当しないこと
(イ)禁固刑以上の刑の執行後5年を経過しない者
(ロ)心身の故障により法定業務を適正におこなうことができない者
(ハ)法第36条の規定により認定を取り消され、当該取消しの日から5年を経過しない者
(ニ)その他(暴力団員等) 等
(※1)中小企業等経営強化法、中小企業者と農林漁業者との連携による事業活動の促進に関する法律、中小企業による地域産業資源を活用した事業活動の促進に関する法律、産業競争力強化法等、国の認定制度に基づく計画を対象とする。具体的には、認定経営革新等支援機関 電子申請システム FAQをご確認ください。
(※2)本制度の趣旨にそぐわないと考えられる場合(例えば、認定申請者または更新申請を予定する支援機関(候補者)の間で相互に経営力向上計画の策定をおこなうこと、1つの計画作成に対し、「主たる支援者として関与した証明書」が不自然に複数者に対し発行されていること、支援者と支援先の中小企業等の代表者等が同一であること等)は、原則的に当該支援者は主たる支援者とは認められません。こういった申請があった場合、必要に応じて、申請者または関与証明書の発行主体に対し、上記の事実関係の確認を行います。
(※3)中小機構にて指定された研修を受講し、試験に合格すること。商工会・商工会議所の場合は、「経営発達支援計画」の認定を受けていること。
具体的な認定基準について|中小企業庁
申請(更新)要件については、次のフローチャートがわかりやすく参考となります。
【参考】経営革新等支援機関の認定(更新)基準について フローチャート|関東経済産業局
認定支援機関となるための申請方法
認定支援機関となるためには、以下の方法で申請が必要です。
申請は認定日ごとにスケジュールが決められています。
- GビズIDアカウントを取得します。
- 添付書類を準備します。
- 電子申請システムを使って、申請内容を登録します。添付書類は添付書類アップロード画面で登録します。
- 認定日をもって認定支援機関の認定がおります
2022年における認定日は偶数月のみで、2022年の残りの認定日は2022年12月13日(申請締切日2022年11月16日)のみとなります。
申請に必要となる添付書類は、業種により異なります。
申請は、電子申請システムで登録します。
【参考】認定経営革新等支援機関 電子申請システム|中小企業庁
認定支援機関の業務で事務所の付加価値を向上させるには
事務所の本来の業務は顧問先への税務・会計支援業務ですが、これだけでは数多くの事務所との差別化はできません。
事務所の特長や得意分野を持ち、顧問先や見込み先へPRすることで事務所の付加価値を向上させることができます。
支援業務で売上と付加価値を向上
補助金申請支援や融資支援など顧問先の本業への支援を業務とすることで、事務所の付加価値を向上できます。
また、顧問先への税務支援業務に加えて、ほかの支援業務を提供することで、顧問先からの単価を引き上げることも可能です。
さらに認定支援機関としての業務実績を積み上げることで、見込み先へのPRにも繋がります。
※2018年7月以降、認定支援機関の更新制度ともに認定支援機関の活動実績を調べることができる活動状況検索システムも稼働しています。認定支援機関ごとの実績が公開されているため、実績がある認定支援機関が実績を積み上げていくことができます。
支援業務の実績をつくるには
認定支援機関としての業務を開始しても、具体的な支援業務がすぐに舞い込んでくるとは限りません。
支援業務の最初の実績を積むためには、現在の顧問先や金融機関へのマーケティング・営業活動が必要です。
新たなサービス提供の開始を発信し、具体的な案件に繋げるためには、顧問先への定期的な発信が大切です。
また、認定支援機関の業務は税制優遇制度や財務支援との親和性も高いため、顧問先へ訴求しやすいといえます。
ただし、現在の事務所の定型業務を見直して時間を確保すること、スタッフのマルチタスク化を進めることも必要です。
支援業務推進には事務所の効率化が必要です
事務所のスタッフや労働時間には限りがあります。
本業である税務支援をおこないながら、新たに支援業務を推進していくためには、現在の業務の効率化が必要です。
また、スタッフが新たな支援業務をおこなえるように、スタッフへの教育・指導をおこなう時間も必要です。
経営革新等支援機関推進協議会がサポートします
認定支援機関として認定された会計事務所様の顧問先支援と事務所経営の効率化は、経営革新等支援機関推進協議会が全面的にサポートします。
経営革新等支援機関推進協議会は、株式会社エフアンドエムが運営する、会計事務所向けの支援団体です。
会計事務所様の事務所経営を全面的にサポートすることを通じて、1,651の会計事務所様(2022年10月現在)にご参加いただいいております。
経営革新等支援機関推進協議会のサービス
経営革新等支援機関推進協議会では、会計事務所様のさまざまなお悩みに対応できるサービスを提供しています。
- 事務所スタッフの教育・研修時間が捻出できない
- 「経営革新等支援機関推進協議会 ACADEMY (以下 ACADEMY)」なら、効率的に職員教育が実現でき、多くの事務所様にご利用いただいております。
- 財務支援などの定型業務を効率化したい
- 「財務支援システムF+prus(エフプラス)」では、顧問先の決算書を活用し、課題の自動抽出~金融機関目線での格付け診断~事業計画書の自動生成~決算レポートの作成まで、一気通貫に提供可能です。
- 月額料金内のみで、追加料金も不要です。会計ソフト23種類に対応しているため、導入も簡単です。まずは14日間の無料トライアルをお試しください。
- 顧問先へスムーズにPRしたい
- 顧問先向けにすぐに活用できる販促ツールをご用意しております。
- 顧問先への毎月の情報提供やセミナーを自動化することで、効率的に販促できます。
経営革新等支援機関推進協議会のサポートサービスの特長は、次のとおりです。
- 補助金・財務支援をおこなうために必要なサービスを一気通貫でご提供
- ご利用料金は1拠点につき、月額33,000円(税込)の定額
- 事務所スタッフの一連の教育訓練から支援時のお悩みへのサポートまで対応
まとめ
認定支援機関となることで顧問先からの評価が上がり、顧問先や見込み先へPRしやすくなります。
認定支援機関としての業務の1つである補助金申請支援は顧問先からのニーズも高く、顧問先の業績向上にもつながる有益な取り組みです。
また、認定支援機関業務は顧問先への財務支援との親和性も高く、顧問先への提供サービスの拡充と単価アップにつながるため、積極的に取り組みましょう。
補助金申請などの資金調達支援や、その他のサービスを含めた付加価値の高い顧問先支援をおこなうための効率化は経営革新等支援機関推進協議会がサポートいたします。
認定支援機関業務の推進や事務所経営でお悩みの会計事務所様は、ぜひ経営革新等支援機関推進協議会にご相談ください。